日本の供養の在り方
まずはじめに、家族や仲間が死んで、その亡骸を葬るという感覚を持っているのは地球上で人間だけ。さらに、日本には仏教と新道という、2つの宗教が混在しているにも関わらず、何の争いも起こっていない世界的にも稀有な国です。
目次
日本における死生観
大前提として、日本では仏教の教えに従い、供養を行っています。そもそも生物の生とは自然のサイクルの一部であり、死ぬことで亡骸が土に還り、肥沃な土壌を形成し、生物がその恩恵を受け、そして死に・・。というサイクルです。
死者がこの世と決別したシンボルが「お墓」であり、生者と死者が繋がりを持つ唯一無二のものが「お墓」であるわけです。なぜなら墓こそ、どこまでも自然界のものであろうとする文化的なもので、仏壇や納骨堂とはそこが決定的に違います。
誰かが亡くなったらどうするの?
病院で亡くなった場合、なるべく早く、ご遺体を自宅など所定の安置場所まで搬送しなくてはなりません。
そのため、急いでご遺体を搬送する手だてを準備する必要があります。また、病院の外へご遺体を運ぶには、医師の書いた「死亡診断書」が必要です。
搬送するには、葬儀社に連絡を取り、遺体搬送車(寝台車)を手配する必要があります。法的には、遺族の方が自家用車でご遺体を搬送されても、何ら問題はありませんが、葬儀社の用意する寝台車の方が、安定性・安全性・不測事態への対応性などから安心です。
この時点で葬儀社を決められない場合や、病院から急かされている場合は、病院と提携している葬儀社などに搬送してもらうこともできます。ただし、その場合はご遺体の搬送だけを依頼するようにしましょう。
菩提寺がある場合は、そのお寺や住職にも連絡します。このとき、ご遺体の安置場所と到着予定時刻も伝えます。檀家の方が亡くなった時に菩提寺の僧侶は、通夜に先だって安置場所に赴き、「枕経(まくらぎょう)」を勤めることになっているからです。
「枕経」は、納棺の前に、死者の枕元でする仏式葬儀の作法で、遺族もご遺体の前に控え、一緒にお弔いします。
枕経が終わったら、僧侶立ち会いのもと、近親者でご遺体を棺に納めます。このとき、ご遺体には死装束を施し、故人の愛用品なども一緒に納めます。そしてお通夜⇒告別式の順で執り行います。
多様化する供養方法
ほんの30年前までは、日本人が亡くなったらお墓にお骨を納めるという選択肢しかありませんでした。
それがこの20年ほどの間に、様々な供養方法が考え出されてきました。
①樹木葬 ②納骨堂 ③散骨
などがそれです。
しかしどんな物事にもメリットとデメリットがあるものです。重要なのはデメリットをしっかりと理解しているかどうかということです。
【メリット】
◎個人単位で埋葬される。(嫁姑問題)
※これはデメリットでもある・・・。
◎後継者の心配がない。
◎比較的安価な場合もある
【デメリット】
◎1本の木の周りに、多数のお骨を埋葬するので、どこに埋葬されているのか分からない。明示されていても、貧弱な苗木であったり、埋葬箇所が密集していて窮屈な感じがする。
◎どこに対して、合掌し、どうやって死者と語り合えばよいか分からない。
◎一人分は比較的安価であるものの、2人以上を同様の手法で供養するとなると、ほとんどの場合でお墓よりも高額になる。
◎「宗派・宗旨を問わず」なので、自分の家系本来の作法での供養ができない。
◎線香禁止のところもある
◎自然に近いとはいうものの、人間が築いた文化的な部分がなく、野生動物が死んだときと大差がない
◎33年後(33回忌のタイミング)には全て掘りおこされ、合葬される。
◎お骨が土に還らず、自然のサイクルの一部となれない(納骨堂の場合)
◎そもそも、国から認められた指定の場所でないと、むやみに散骨などしたら違法
◎死とは自分の事だけを考えて良いものではない。残された人の心の拠り所として、死者に会いに行ける場所がないということは勝手極まりない
まとめ
21世紀に入り、これまでの1500年以上の歴史の変遷以上に、日本の供養の在り方や手法は多様化を遂げている渦中にあるといえます。
少子高齢化や核家族化が進む昨今において、必ずしもそれを悪という訳ではありません。メディアが報道のネタ欲しさだけのために、物事の本質や、裏を伝えもせずイタズラに持て囃すだけの無責任報道に惑わされず、メリットとデメリットをしっかり理解した上で、ご親類の方々の供養方法を選択してほしいだけなのです。
決めてしまってから後悔しても、もはや取り返しはつかないですから。
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